「見えず 聞こえずとも~ある夫婦の幸せさがし~」あの日 あの時 あの番組より(後半)
( 前半のつづき )
久代さんは、何処に何があるのか
手で触れて知ります。
机や水道の位置、段差や床の” きしみ ”など。
情報を繋ぎ合わせて把握し、
スムーズに移動する。
お料理は、肌で感じる熱の強さや、箸から伝わる
振動で火加減を調整できるようになった。
調味料は、容器の形で見分ける。
ソースなどかける時は 実際に指で触って確かめる。
夫の弁当は20分で完成。
針仕事は趣味でもあるが、和裁の資格を持って
おり、人から頼まれるレベル。
掃き掃除は座っておこなっていた。
夫「 結婚して困る事とか苦しい事とか いっぱい
出てくる。それも全部ひっくるめて自分が
成長し人生が広がっていく。
イヤな事も広がっていくが、その中で
本当の幸せが見つけられたら 一番いいと思う 」
当たり前だが、2人は何気ない会話の時も、
散歩や外出時も触手話をしている。
2人が楽しみにしているのはTVを見ること。
正座で向かい合い触手話で内容を伝える。
朝の連続TV小説は、結婚以来 欠かさない日課だ。
夫は9時から農作業。
場所は里から車で30分の山。
お昼時。
夫が弁当を食べる家(以前の自宅)にはパソコン
があり、わが家にいる妻とメールをする。
自宅のPCは文章が、点字で表示されるタイプ。
「 いのた~ん (夫のニックネーム) 」から始まり
こんな事をしている等、たあいもない会話。
久代さんの明るくチャーミングな人柄
そのままの内容。
言いたい事を言い ケンカもする。
気は使わないが、互いを意識して暮らしている。
夫「 相手が満足できて初めて自分も満足できる。
まずそれが一番 」
久代さんは結婚して すぐ、同じ障害がある人の会を
立ち上げ、定期的な交流の場を作った。
この日も、目や耳が不自由な人とボランティアが
来られ、結婚14年目の今 会員は50名に増えた。
妻「私 大阪生まれなんですけど、
京都府に 引っ越しました。
京都府には盲ろう者の団体が無かったので、
盲ろう者として友達が欲しいと思った。
集まって交流したくて活動を始めたんです 」
この会で目や耳が不自由な人が、思いきり
楽しんでくれる事。それが2人にとって
何よりの喜びです。
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この番組はアーカイブ。
場面は変わり、リアルタイムへ。
好彦さんは、昨年71歳でなくなりました。
久代さんがスタジオにくれたメールです。
「 18年間どこへ行くにも連れ添ってきたから
ひとつの愛があったのでしょうね。
周りの人から支援者が多い都会へ引っ越したら
どうかと言われますが、住み慣れた家から
出たくはないです。
思い出の多い家です。一人暮らしは不便かも
しれませんが 笑顔で生きていきたいと思って
います 。
笑顔で生きていくように心を大きくもって感謝の
気持ちで豊かに元気で暮らしたいと思います。
家で居る時は、落ち着いて何か生き甲斐をみつけて
楽しく暮らそうと思います。
周囲の人から愛されて とても幸せだと
感じています。
好彦さんは私の心の中に生きています。
どんな事があっても生き抜いて いきたいと
思います。
まだまだ好彦さんへの愛は、冷めてはいません!
いつか私が命を全うして 天国にいけるとき
必ず好彦さんの所へ行きたい 」
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5年に一度行われる厚生労働省の調査(推計)に
よれば、全国に盲ろう者は約23,000人いるとされる。
(ただしあくまで推計のため、どの地域を
サンプルにとるかで、5千人~1万人単位で数値が
通じて把握している人数はおよそ900人。
pixabay :monsterpong09